北日本といえども灼けつくような暑さの中の視察であった。
昨年7月に市内で起こった触法少年の痛ましい事件から、
委員会としてなすべきことは何かを模索してきた。
二度と再びあのような悲惨な事件を引き起こさないために、
また子どもたちが健全に幸せに暮らして行けるために、
何らかの条例を制定すべきではないのかと考え、金沢市の
「子ども条例」そして三条市の「子ども・若者総合サポー
トシステム」について視察を行った。
加えて自殺率の高い島根県にありながら、なかなか進まない
自殺者への対策を探るために糸魚川市の「自殺対策」につい
て視察を行った。
金沢市で制定された「子どもの幸せと健やかな成長を図
るための社会の役割に関する条例」(後子ども条例とする)
は、子どもたちを取り巻く環境が変化する中、子どもたち
を市民みんなで育てていくことを目指して平成14年に制定
されたものです。
主体的に関わる・相互に連携する・子供の人格を尊重する・
自ら考え、判断し、行動する力などを持つ子どもを育てる・
大人が自らを省みる、との基本理念を基にして大人の責務、
基本的な施策、推進体制が定められています。
大人の責務は、家庭・地域・学校等・企業・行政と五つに
分類され、それぞれが責務を認識出来るようになっている。
さらに行動計画において、具体的に何をしていくのかが規定
されており、家庭・地域・企業は「行動指針」、学校・行政
は「行動計画」として表されています。
「行動指針」とは、例えば全家庭が一斉に、かつ計画的に取
り組むことはなかなか困難と思われ、いくつかの選択肢の中
から、それぞれの家庭で選んだ項目について、それぞれの家
庭で自主的に取り組んでいくことが実態に即しており、地域
や企業においても同様であるため、事項の例示をして指針と
している。
学校・行政は具体的な行動計画をたて施策を実施しており、
多くのメニューがあったが、出雲市と比較して際立って違っ
たものはそう多くはなかった。
金沢子ども週間(毎年10月の第2日曜から一週間)や2学期制
は出雲市にはない施策である。
三条市においては「子ども・若者総合サポートシステム」に
ついて学んだ。
これは、乳幼児から就労・自立にいたるまできれめなく一貫
して、個に応じた必要な支援を総合的に受けられるようにす
るため、市がその情報を可能な限り集約・一元化するととも
に、関係組織・機関と連携して支援体制づくりを行うことに
より支援するシステムです。
市民の子育てを巡る様々な悩みに対して、三条市では、
福祉や教育などの各セクションが様々な支援事業を行ってき
た。また、児童相談所や医療機関、警察など関係機関におい
ても、本人や保護者を支援する施策が行われていました。
しかし、子どもの支援ニーズが多様化・複雑化する中で、
個に応じた支援体制が十分であったか、切れ目なく一貫した
支援が行えていたかどうかなど、縦割りによる連携上の課題
がありました。
そこで三条市は、「小さな三条市民に」必要なサポート体制
を作るのは三条市の責任という理念のもと、「子ども・若者
総合サポートシステム」を構築し、これまで支援してきた関
係者が真の意味で連携し支援できるシステムを確立すること
になったのです。
支援対象は、乳幼児から35歳くらいまでの若者で、支援
内容は被虐待・すべての障がい、不登校,非行、引きこもり、
その他支援が必要と考えられるものとなっている。
具体的には、今まで窓口が分散されていて分かりにくかった
り、縦割りで支援の手が届かなかったりしていたものを、教
育委員会の中に子育て支援課を設置することで、義務教育と
子育て支援の連携を図れるようにした、これは、情報の一元
管理を可能とした点で画期的なことである。
さらに、子育て支援課をハブ組織とすることで、児童相談所、
医療機関、警察などの関係機関からの必要な情報の提供を受
け、連携して支援体制を構築できることになった。
従来の方法では見えなかった視点で子どもたちを捉えること
ができ、ライフステージに応じた切れ目ない一貫したサポー
トで問題を発見し、防止し立ち直らせることが可能となるだろう。
目を引くのは、学校卒業後に自立できない若者への支援を重
視している点である。
出雲市でも見受けられるが、自宅に引きこもってしまった中
学生が、卒業すると同時に極端に支援される機会を失ってし
まい、そのままいわゆる「ニート」化してしまうことがある。
そこで三条市では、学齢期からつながった若者支援も視野に
入れることとしたのです。
このシステムは内閣府のモデル事業ともなりました。
もうひとつ、参考としたいものに、子育てサポートファイル
「すまいるファイル」がある。行政機関と保護者をつなぐツ
ールとして、出生するすべての子どもの保護者に子どもごと
にわたし、支援機会の拡大と質の充実を図っているものだ。
一人の子どもの育ちを長期間追っていけるので、問題を発見
し解決することが可能となりそうなシステムに思えた。
糸魚川市では、自殺対策を視察した。
新潟県は自殺率が高く、地域全体で取り組むための事業が行
われていた。
自殺者の約9割には、軽症うつ病・うつ病等の精神疾患が背
景にあるといわれており、自殺予防のためには、うつ病対策
をふくむ心の健康づくりが必要となる。
特に糸魚川市は高齢化率が45%と高いため、高齢者のうつ
病対策に力点がおかれていた。
うつ病の早期発見・早期介入が自殺予防に効果があるため、
糸魚川市ではうつ病対応マニュアルを作成し対応していた。
島根県も自殺率が高い県で、出雲市も毎年多くの人が自ら
命を絶っている。
一日も早く予防対策、自死遺族対策を立ち上げる必要性を痛切に感じており、参考になった。