デジタル防災情報システム(VHF-LANコアシステム)の視察報告
元長崎県立大学情報メディア学科教授 藤澤 等氏
3.11の東日本大震災は、今までの災害に対する考え方を大きく転換するものであった。予想を大きく超える津波の被害、原発震災と呼ばれる原子力発電所の被災、防災拠点となるべき庁舎の崩壊、そして津波により失われた膨大な住民データなど、出雲市においても従来の常識にとらわれて防災を考えていたら、住民の生命財産が守れないのではないかとの疑念が生まれてきた。
津波から多くの人を救ったのは、日ごろの訓練と情報だった。福島第一原発からの避難は国や自治体の緊急時対応の不適切さが目に付いた。
島根原発に関しては今までほとんど関心を持たなかったが、避難区域となる30キロ圏内にすっぽりと入ってしまうことが分かり、無関心ではいられなくなった。
当市の中心部を壊滅的に破壊し襲う災害として心配するのは、斐伊川神戸川の氾濫だ、堤防決壊で現市役所庁舎の3階まで水没することが、想定されている。
そして、島根原発が何かの災害や事故で、放射能を拡散させこの地域を汚染してしまう事態である。
その時に、的確に全市民に緊急情報を流し、安全に避難してもらうことができるシステムを、考えておかなければならない、それは現在のシステムだけで可能なのか、検証し付加することが必要だ。
出雲市の緊急時防災伝達手段は、防災行政無線(現在デジタル化が進められている)、有線放送、ケーブルテレビ、エフエムいずも、消防団緊急伝達システム、、市ホームページ、しまね防災メールが使われている。
防災行政無線はデジタル化され、多伎・湖陵・佐田そしていずも地域南部4地区に平成24年度までに整備される予定である。
旧出雲地域は、ケーブルテレビ・エフエムいずもが主体となっている
現在ある災害時の情報伝達手段の特徴は下記のようになる。
携帯電話の特徴
便利なように思えるが、行政による防災情報のツールとしては不適格
○携帯電話3社と同じ契約を締結する必要があり、同時シームレスにI情報が流せない
○一斉通知はできるが、個別・地域別通知は不可能
○携帯不感地帯が存在する(特に中山間・島哩地域)
○日常の定常的自主運用ができない
○携帯電話会社との契約料が非常に高価
デジタル同報無線の特徴
音声同報のみでコスト高
○これまでのアナログ無線と変わらない
○機器メーカが少なくコスト高。
○双方向は事実上不可能(数台の端末なら可能)
有線・ケーブルテレビの特徴
定常的運用に問題はないが、災害時や緊急告知には不向き
○災害時には、多くの場合、国道沿いの有線は断線不通となる
○人間の移動(災害時の避難行動など)に有線はついてゆけない
○留守宅など不在者への告知ができない
○有線の施設設備が非常に高価(既設であっても端末に費用がかかりすぎる)
○保守管理が難しく、障害があったときの復旧に時間がかかる
藤澤氏が提案している地域包括情報網は、ホワイトスペースと呼ばれるVHF帯と無線LANを使うもので、ホワイトスペースとは、テレビ放送用電波の空き部分すなわち隙間周波数のことで、日本ではテレビ放送用の電波(VHFやUHF)を40チャンネルほどの周波数に分けて各放送局に利用免許を与えている。1つの地域で考えると実際に放送されているのはVHF・UHF合わせてもせいぜい10チャンネル程度で、残り30チャンネルは使われていない。これは、地域ごとにチャンネルを飛び飛びにすることで、混信を防ぐためだ。この未使用部分をホワイトスペースと呼んでいる。
ワイヤレスといえば既に無線LAN(WiFi)があるが、ホワイトスペースが注目されるのは、使っている周波数帯域が雨や障害物に強く、電波が隅々までよく届き使い勝手が良い電波であるからホワイトスペースといわれている、
本年7月から地上デジタル放送への移行に伴い、アナログ放送の終了で空く周波数帯(VHF帯)を利用するものである。
情報インフラを使って、防犯や防災情報、あるいは広報、電子決済、電子申請、
福祉や医療、教育などの行政サービスを一括で提供する自治体はまだない。
携帯端末のスイッチを入れたら市町からの重要な情報を見ることができ、イン
ターネットを通じて世界に情報発信できるのが当たり前の時代に、自治体が独
自に双方向回線を持たないでどうして住民どコミュニケーションできるだろうか。
望まれる地域の情報網は、端末に電波が届くこと、双方向であること、自治体が独自運用できること、旧システムの有効利用が図れること、県や国とのシステム的連携がシームレスに取れることなどが必要で、VHF体の通信事業はそれがとれる方策だ。
藤澤氏が提案するコアシステムは、庁舎とつながった同報無線塔基地局から、無線で、各家庭のパソコンや緊急端末、携帯端末をつなぐもの。端末は、市販の携帯電話やiPad(アイパッド)も使える。光ファイバーなどの有線と違い無線は3重、4重のセキュリティがかかっている。
緊急時は、自治体がすべての情報を掌握し、避難場所と経路を地図上に出したり、タッチパネルの操作や電話で安否確認が簡単にできる。
無線なので外でも利用が可能。橋が落ちそう、川が氾濫しそうなど、常に監視する必要があるが、50センチのの地滑りで警報を鴫らすこともできる。
平時は、行政情報の配信や、独居老人の見守り、介護情報の提供のほか、医療相談、市況憧報の提供、webカメラの利用、教育現場での活用、もちろん観光・商店情報なども知ることができる。市町全域でなくとも、一部の地域で部分的に始めることも可能だということであった。
地上デジタル化が完全実施されていない状況もあり、まだ導入実施した自治体は無いが、本年12月に日向市に導入が決定しているということなので、来年の春にでも、実施状況を視察し、次のステップに進みたいと考えている。
「デジタル防災情報システムPPファイル」をご覧ください。
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B5dMzTYNjiGtN2E1NGY4ODEtYTIxMC00NWQ5LWE3NWYtZTZlZDlkOGY2ZDk5&hl=ja
「デジタル防災情報システムPPファイル」をご覧ください。
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